汚染水問題 今日の毎日新聞記事

◇ 9月2日 毎日新聞

●オピニオン欄 「汚染水漏れは新たな事故」(会社員 柳 明則49 東京都板橋区

原子力規制委員会は8段階の国際基準に対し「レベル3」に相当すると発表したが、事態は異常事象ではなく新たな事故の発生である。

・今回の事故はメルトダウンした事態も、原因の究明も、廃炉への道筋も示されないまま政府が収束宣言した後の新たな事故である。

・汚染水を貯蔵するタンクは簡易型で耐用年数は5年である。漏れる危険性は当初から指摘されていた。

安倍晋三首相は成長戦略に原発輸出を掲げ、国内の原発再稼働を目指しているが、国策で進めてきた原子力政策が引き起こした事故の責任を東電だけに任せるのは限界がある。新たな事故と自覚し、危機管理を高める対策を講じてもらいたい。


●オピニオン欄  「首相は汚染水対策に本腰を」(元教員 海野 省冶70 横浜市港北区) 

・今必要なのは、安倍晋三首相がこの汚染水漏れに対し、国家の行政上の責任者としての発言をすることであり、対策への強い姿勢と行動を見せることだ。

・本紙22日朝刊の社説にもあるような「国の当事者意識の不足(欠除ではないかと思うほどだが)」を指摘する声は大きくなりつつある。


・汚染水問題を3・11に次ぐ「国難」ととらえ、原発対策を国が早急に実施すべきである。経済対策も大切であることは承知している。しかし、今国民は、いや日本人のみならず世界中の人々が固唾をのんで日本の為政者の言葉と行動を待っているのではないか。


山田孝男「風知草」 

・「国が前面に出る」と経済産業相は言うが、実働部隊が納得し、奮い立たねば実のある成果は期待できまい。先週末、福島第一原発に通う東京電力社員の話を聞き、そう思った。

・「管理職が(屋外の)現場に行かないんですよ。ほとんど線量浴びないで退職していく管理職がかなりいる。そのことに対する不満が職場にある。『(点検や補修のため現場に)行ってきてくださいよ』と管理職にはっきり言う人もいますが、(廃炉作業の)実施計画には『屋内で管理』と書いてある。管理職はそれを盾にとるんですよ」。

・慢性的情報不足、場あたり的命令と職場の風遠しの悪さに泣く平均的社員である。「記者会見で副社長が『1日4回(従来は2回)やるって言っちゃったでしょ?でも人手は増えない。あれやれこれやれって言ってくるけど、現場作業員の(被ばく)線量なんか本気で考えていないと思う」。

東電は、多核種除去装置(東芝製ALPS=アルプス)で汚染水の有害核種を除き、魚協の了解を得て海に流すつもりでいた。ところが、6月、この装置が故障。8月、間に合わせの地上タンクから汚染水が海に流れ出し、パニックが広がった。

・経緯を見守ってきた官僚は「制御不能。いや相当まずいですよ」と嘆息。ここに至ったて首相、経産相が政府の責任を強調し始めたという流れである。

・汚染水をめぐる混乱は、第二次大戦における日本軍のガダルカナル作戦を思わせる。失敗の原因は
敵を甘く見、己を過信したところにある。戦略に大局観がなく、打つ手が場あたり的だった。東京の机上では想像できない実情を、首脳部が把握できなかった(「失敗の本質/日本軍の組織論的研究」中公文庫)。

・汚染水を甘く見、間に合わせの貯水タンクとアルプスを過信し、錯誤続きで作業員がヘトヘトになっている福島と似ている。

・福島をガダルカナルにするわけにはいかない。 東電に代わって前面に出る国の姿勢は人事と予算に表れている。政府は先月27日、経産省の糟谷敏秀・総括審議官(52)を「汚染水特別対策監」に任命した。予算もつける。これから先は、安全より低価格という選択はなくなると信じたい。

・福島の作業員たちの東京不信をぬぐい、空前の海洋汚染を食い止めなければならない。国会審議を活用して内外へ発信を強め、失敗続きで傷ついた日本の国際的信用を取り戻さなければならない。


<所感>

・今まで小生はこのブログで連続して汚染水問題の情報を収集し所感を述べてきました。毎回の所感で述べてきた見解は、要約すれば本日の毎日新聞の上記3つの記事の内容と同じことだとあらためて感銘しました。

・こうした見解が多くの新聞でも唱えられ、テレビでもクローズアップされていき、輿論が大きなうねりを起こし、政府の取り組みが画期的に前進することを期待しています。

ガダルカナルの悲劇を回顧すると、緒戦で敗北したアメリカ軍は取組み姿勢を大幅に革新しました。
たとえば、戦闘機の刷新(P40からグラマンへ)と戦法の変革(空中戦回避、2機体制で上空から一撃離脱)が成功し、緒戦時にあったゼロ戦の優位性が消え、日本軍が制空権を失ったことが大きな要因のようです。
さらに当時のアメリカ軍は実践部隊・訓練部隊・休養部隊の3交代制で、長期戦対応体制を構築していたようです。

・汚染水対策で安倍政権と霞が関官僚組織が当時のアメリカ軍のような取り組み革新を行うことを期待しておりますが・・・。国会もこの問題で建設的な取り組みを早急に行うべきだと思います。