福島第一原発汚染水問題 情報収集(3)

 8月8日の新聞では毎日新聞が一面に8段にわたり、「汚染水流出1日300トン、対策に国費」とい大見出しで記事を掲載していました。また3面のクローズアップ2013欄で、「見えぬ解決の道筋」という表題で、5段にわたって解説記事が掲載されていました。

やっと政府が乗り出して一安心かと思いましたが、この解説を見る限り前途は大変厳しいようです。解説記事のポイントを記録しておきます。

●場当たり対策に限界

・福島第1原発の周辺では、地下水が山(西)川から海(東)側へ1日数センチの速さで流れ、1〜4号棟機建屋には地下水が流入し汚染水が発生。建屋内には6日現在、約7万7000トンある。セシュウムを取り除くなど処理された水は敷地内の貯蔵タンクにたまり、約33万トン(ドラム缶165万本相当)にあたる。

・タンクの増設・・・限界に近づき、2015年に9月に一杯になる。

・凍土壁設置・・・経済産業省は今年5月、地下水流入を防ぐために、建屋周辺の土を凍らせる凍土壁設置を指示したが、完成は15年度中だ。世界初の工事で成功するかどうかも不透明だ。

・海側遮水壁・・・11年4月に建屋の高濃度汚染水が海トンネルを伝わって流出。現在も2,3号機脇のトンネル内に約1万1000トンの高濃度汚染水が残る。12年6月、海岸約780メートルを鋼製の板で覆う海側遮水壁の工事に着手した。

・水ガラスで固めて壁をつくる地盤改良・・・14年9月に完成する前の今年6月、2号棟機の海側敷地内の地下水から高濃度の放射性物質を検出。海に流出するのを防ぐため、7月8日から敷地の海に近い地中(深さ16メートルまで)を水ガラスで固めて壁をつくる地盤改良を進めた。だが、海側に壁を作ると地下汚染水がせき止められ、水位が上昇し、水ガラスの壁がないところに来ている。東電は7月22日に汚染水の海洋流出を発表。同31日には水ガラスを超えて地下汚染水が海に漏れていることも認めた。

原子力規制委員会は今月2日、海洋流出防止のため水ガラスでせき止められた地下汚染水のくみ上げを指示したが、その保管場所は限られている。


●国、東電任せに危機感

・「廃炉費用は事故を起こした東電の負担が原則」としてきた政府が国費投入に踏み込んだ背景には資金不足や社員流出で疲弊する東電任せでは汚染水問題がますます深刻化するとの懸念がある。

・先の参院選挙での与党大勝で国会のねじれが解消し、政権運用が安定したこともあり、安倍政権は事故収束に向けて一歩踏み込む方針に転じた。

・汚染水対策なら予算を付けやすい事情もある。政府は原発事故後、国の予算で廃炉技術の研究開発費(約1000億円)を用意。 一部は廃炉のための技術開発支援に使われている。汚染水対策もこの延長線上で説明できる余地があり、国民の理解も比較的得やすいのでは(幹部)と期待する。

原発事故の賠償や除染費用を東電の将来の利益で全て賄う現在の仕組みには、矛盾が目立ち始めている。収益改善の切り札として期待した柏崎刈羽原発の再稼働が地元の新潟県の反対で見通せない中、東電の債権計画は破たん寸前の状況。今回、政府はそんな東電の経営状況も勘案して国費投入に乗り出したとみられる。

<所感>
・場当たり的対策と批判するばかりでは問題が解消せず、被害を受けるのは福島県の漁民の方々から始まって、多くの国民、さらには外国の人々にいたるまで、広範囲の人々になる恐れがあります。

・場あたり的対策の経過を見ると、まるで悪性癌に罹った患者に対する治療が効果があがらず、だんだん有効な対応策が見つからない
状況と似たようだなと感じます。癌では新しい治療法の開発によって治療水準が上がっているようですが、汚染水対策も関係者の方々の画期的な発想が導入され、有効な対応策を企画・運用できるよう祈っております。

・ひとたび事故を起こせばこんな大変な事態を引き起こしているのに、安くて安定的な?原発エネルギーは日本にとって必要だと声高に叫ぶ原発推進派の言動、原発輸出にのめり込む人々の姿勢は理解に苦しみます。