大乗仏教の教えと「アルプスの少女ハイジに学べ」との共通点

●凡人の私が学んだ限りのレベルで言えば、大乗仏教の教えのポイントは次のように説明できます。
・四苦八苦(生・病・老・死・愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦)から解放されるためには、六波羅蜜(布施・受戒・忍辱・精進・禅定・智慧)を実践しなさいということです。

唯識の理論によれば、六波羅蜜の実践によって善の種子がアーラヤシキに貯蔵され、それによってマナシキが生み出すエゴイズムを消し去ることができるので、苦から解放される訳です。

・布施には財施、法施、無畏施の三種類の布施があります。特に重要なのに判り難いのが無畏施です。初歩的な無畏施には、無財の七施眼施和顔施言辞施身施心施床座施・.房舎施)があります。本格的な無畏施とは、困った人々に寄り添ってその不安・恐れを取り除き、安らぎを与えることです。 
無畏施が成功するためには、困っている人の内部に潜んでいる意志の作用を活性化させて、前向きに考える元気を取り戻すことが大切のようです。

●以下古今宗教研究所のブログから、無畏施に関する論述を引用します。
・人間、前向きな気持ちさえ失わなければ、何とかなるものです。不思議と智慧や力が湧いてきたり、事態が思いもよらない展開をしたり、導きを得たりして、もうどうしようもないというようなところを切り抜けるというのは、決して珍しいことではありません。無畏施とは、本人の自己治癒力、自己解決能力を引き出すことだと言い換えてもいいでしょう。

・「無畏施」と「法施」を比較してみましょう。「法施」すなわち正しい法を説くといっても、聞く側が受け入れる状態になければ、何の役にも立たないわけです。まず、人の話を聞いてみようかと思える状態にまで引き上げる必要があるわけです。

・そして、正しい教えを説くことと、人の心を引き上げることとを比較すると、後者のほうがはるかに難しいものです。悩み込んでいる人を相手にした時ほど、理論理屈の無力さを思い知らされることはありません(その一生懸命さに相手の心が動かされるということもありますが…)。

・つまり、法施だけでは衆生救済は不可能で、それ以前に無畏施の実践が必要不可欠だと言うことになります。つまり、自己救済のみを目的にするのならともかく、衆生救済を考えるのであれば、法施以上に無畏施が大切だと考えられます。

●「アルプスの少女ハイジに学べ 元気を取り戻す11の方法とは」の論述から

・有名な児童文学「アルプスの少女ハイジ」を原作にした日本のアニメ版が世界中のテレビで放映されて人気を博していますが、心理カウンセラーの岩田明子さんの本を読んで、無畏施の教えと同じような論述があり感銘しましたので、読み始めた部分のポイントを引用します。

・ヨーロッパ文化圏では、大人になるためには「自分が今、何をしたいのかを知り、それを相手に伝えることができること」だと言われています。

・「今何をしたいのか?」この問いは、人生を再生させる扉を開くためのとても大切な鍵となるのです。この問いの特徴は過去をまったく不問にしています。誰もがもっている創造性を発揮することだけが問われています。

・周囲との調和を重んじる日本では大人になるということは自立性よりも周りに迷惑をかけないこと、周りからどのように見られているかが重要だと教えられています。そのため周りの反応を気にして、やがては人間関係のことばかりを考えることになり、最終的に自分の要求に素直に従えなくなってしまうのです。

・大人たちが「何をしたいのか?」という質問よりも「なぜこの出来事は起きてしまったのか?」という質問ばかりしてしまうのは、「教育」と「学習」の場でそう問われ続けてきたからです。

・ハイジはおじいさんに「さてこれからどうするかな?」と問われて「おじいさんがお家の中にもっているものを見せてよ」と答えています。ハイジにとって、おじいさんの家の中のチーズ作りの道具など初めて見るものばかり。アルプスのことを何も知らないハイジの目は、好奇心でキラキラしています。

・ハイジはヤギの乳しぼりをしようとしているおじいさんのところへ近づき、自分にも乳搾りをやらせてほしいとおねだりします。 おじいさんは5歳のハイジには無理だと思ったのか気乗りをしない返事をするのですが、ハイジは「できる!できるわ」を連発します。ハイジは全く未経験のことを前にして「できるわ」と言っているのです。でも決してウソを言っているわけではありません。ハイジにとって心の底からどうしてもやりたかったことでしたし、心の中では間違いなく「できる」映像しか思い浮かんでいないはずだからです。こころの目を一番見たいものに集中して注ぐだけで、生きるパワーと心の躍動が解き放たれます。脳は好きなことに対し、好奇心をもって一心不乱に体験しているとき、もっともよい状態になるようです。

<所感>
・理不尽と思われる事態に直面して悩み困っている人に無畏施を行い成功するためには、その人の内部に潜んでいる意志の作用を活性化させて、前向きに考える元気を取り戻すことが大切のようです。

・そのためにはハイジのように「やりたいこと」を発見し、「できる」とイメージして、その実現に集中するようになれればいいようです。まず始めには、その方向での小さな目標を立てて実践し成功して、勝利体験を味わうことが必要なようです。

・困った人に寄り添って「どうしてこんな結果になったのか?」などと過去を考えすぎている状態から、今という瞬間に集中して生きるように介添えする、いわば良質なおせっかいの姿が無畏施を行う姿なのだと思われます。