原発ゼロをめぐる記事

5月5日は原発ゼロの日となった。インターネット検索で読んだ中で、印象に残った記事を列挙します。

東京新聞5月4日社説
原発は震災前にも、定期検査以外に不祥事やトラブルが相次いで、平均稼働率は六割台と低かった。震災後の昨年度は二割にとどまった。原発は少し大きな地震に遭えば長い停止を余儀なくされる。基幹電源とは言われていても、もともと不安定な存在なのである。

原発ゼロはゴールではなく、原発に頼らない社会へ舵をきるスタート地点なのである。それでも大きな転換点には違いない。ゼロ地点に立ち止って考えたい。

・震災は原発安全神話を粉々にした。安全神話の背後にあるのが経済成長の呪縛である。経済成長を続けるため電力需要の伸びに合わせて原発を増設し続けた。そうするには原発は絶対安全でなければならなかったのだ。その結果、原発安全神話に包まれた。

・経済成長がもたらす物質的豊かさは(核の)恐怖さえまひさせたのかもしれない。被爆国としての倫理に勝るほど、成長の魅力は強かったのか。経済の効率よりも、私たちは人間の命と安全を第一に考える。

・ゼロは無ではなく、そこから生まれるものは無限大という。持続可能で豊かな社会を生み出そう。


朝日新聞社
脱原発への民意を政治がしっかり受け止めた結果であれば、歓迎すべきことだ。しかし実態は、政府の再稼働ありきの姿勢が原発周辺の自治体をはじめとする世論の強い反発を受け、先が見えない中での原発ゼロである。不信の連鎖がそこにある。

原発事故は、信頼を基盤とすべき社会を「不信の巣」へと変えたのだ。ところが既存の体制はその根深さをくみ取れていない。象徴が再稼働問題だ。

・野田政権は「脱原発依存」を掲げながら、規制当局の見直しをはじめ何ひとつ現実を変えられていない。再稼働
についても、ストレステストをもとに形式的な手順さえ踏めば、最後は電力不足を理由に政治判断で納得を得られる踏んだ。これで不信がぬぐい去れるわけがない。

・福島事故で覚醒した世論と、事故前と同じ発想で乗り切ろうとする政治との溝は極めて大きい。今、政治への国民のいらだちをうまくすくいとっているのは、橋本徹大阪市長なのだろう。ただ、有権者が政治家個人の突破力に期待するばかりでは、行き詰まる。私たち自らが考え、合意形成をはからなければならない。

毎日新聞5月6日社説
・福島第1原発の過酷事故が起きた後も「原発ゼロ」を回避する力が働いた。それに反して全原発停止が現実になった背景に、国民の強い意志が感じられる。昨年9月の毎日新聞世論調査では「少しづつ原発を減らす」「できるだけ早くすべて停止する」という回答が合わせて7割に達した。

・政府は「脱原発依存」と「40年廃炉」方針により「原発ゼロ社会」をめざすことを表明している。であれば、この機会を「原発出口戦略」を練る好機と考えたい。

原発の新増設や核燃料サイクルにかけてきた資金や人材を使用済み核燃料の処分や廃炉などに思い切って振り向け、「廃炉ビジネス」でも世界をリードしたい。

・再生エネにしても火力発電にしても、電気料金を下げるには、電力会社間の「価格競争」を促す必要がある。小売りを完全自由化し、地域独占体制に風穴をあける抜本的な制度改革が今こそ求められる。

瀬戸内寂聴さん
・5月2日経済産業省の前で市民団体の活動に加わり、原発のない社会作りを呼びかけました。
・「(原発再稼働について)何を考えているのかと思った。これまでにないくらい日本の状態は悪くなっている」「90年生きてきて今ほど悪い日本はありません。このままの日本を若者に渡せない」
・「誰かに任せてなんて(原発が)無くなるんですか。自分たちで戦って無くさなきゃいけないんです。人任せにしてどうして無くなりますか。自分が動かないとダメですよ」

橋本徹大阪市長
・電気が足りない、原発が止まったら日本がだめになる、いろんな理由で原発早期稼働を主張する人たちがいる。そういう意見もあるだろう。しかし動かすにしてもその手順というものがあるだろう。読売も産経も、今の政府の手順でよしとするのか。
・今は安全委員会の安全に関するコメントを封印。そしてその場その場でいろんな基準を出してくる。暫定安全基準で現在電力会社が対策を講じていないものについては工程表を出せば良いとなった。工程表を出すだけで良いというのは誰が決めたんだっ?これは安全基準なのか?もうぐちゃぐちゃだ。
・安全確認は、安全基準の定立とその適合性チェックだ。それは政治ではできない。法的に位置づけられている権威にやってもらうしかない。その権威は良くも悪くも原子力安全委員会だ。ゆえに原子力安全委員会の安全性に関するコメントが絶対必要だ。それを民主党政権はすっ飛ばしている。統治の在り方がなっていない。

中国新聞
・電力不足への懸念はぬぐえていない。反面恒常的なゼロへの視界が開けるかもしれない。いづれにしても大切な節目である。ところが野田佳彦首相の肉声が聞こえてこない。エネルギー政策の腰が定まらない政府の実情を映しているかのようだ。
放射性物質の飛散状況をめぐって、国や東京電力の情報開示は後手後手に回った。そうした対応の繰り返しや根拠に欠ける事故収束宣言が疑念ばかりを植え付けた。原子力規制庁の発足さえ遅れたまま、急ごしらえの安全基準で首相は大飯原発の再稼働をめざした。前のめりの姿勢は不安に拍車をかけた。信頼回復は並大抵ではない。
・国が脱原発依存の道筋を示すことだ。一時的な再稼働が、なし崩しの原発再稼働へと後戻りしない。国民がそう確信できなければ、いくら安全策を講じようと納得しないだろう。

●夕刊ガジェット通信
毎日新聞の4月24日付けの特集記事を参照して、再稼働するためには最低限でもクリアすべきものは何かについて書いてている。
民主党原発事故プロジェクトチームは「再稼働の5条件」を政府に突きつけた。第1には、原子力規制庁の設置である。座長の荒井聡議員は、「日本の原子力政策は欠陥だらけと分かりました。その原因は安全神話の中に身を置いた原子力ムラの一部の人たちだけで政策を主導してきたことです」とコメントしている。
原子力規制庁が設置されていない現状は、旧来の体制のままで政策がすすめられていることを意味する。荒井議員は「原子力安全保安院経産省にあるうちに、再稼働の道をつけたいとの思惑があどこかにあるんじゃないかと勘繰りたくもなります」と語っている
・クリアすべき第2は、福島第一原発事故の原因を明らかにすることである。政府の事故調査・検証委員会や国会の事故調査委員会が取り組んでいるが、いまだに結論はでていない。
どうして事故が起きたかのか、そのことが分からないうちに原発を再稼働させたら、同じような事故がおきても対処できない。


産経新聞5月6日社説
・日本の原発建設と発電技術は世界最高水準の域にある。途上国などへの原発輸出による経済振興こそが、日本の技術先進国の地位を維持するために欠かせない方途である。
・今年2月米国での原子力発電の支持率は60%と高い。米政府は、この数字を適切な情報開示などによる成果と分析している。日本政府は米国の取り組みを範とすべきだ。
原発を止めて火力発電に依存する日本は、地球温暖化問題と排出枠取引などでも不利な立場においこまれよう。
資源小国日本にとっては、原発ゼロは自らの息の根を止める行為に等しい。


●読売新聞5月5日社説
・このままでは電力需要が膨らむ夏に間に合わないおそれがある。大飯電発のある関電管内は原発依存度が高い。
再稼働しないと猛暑時の電力不足は役15%だという。法律による節電の義務づけや計画停電が必要になるかもしれない。首相が先頭に立ち、大飯電発の再稼働実現に向け。地元の瀬戸国全力を挙げるべきだ。
経団連の先月実施した調査では、製造業の約7割が電力供給に不安があれば減産すると答えた。原発を代替する火力発電の燃料費は全国で年3〜4兆円もかかる見込みで、電力料金の値上げも懸念される。景気を冷やし、産業空洞化に拍車をかけることになろう。
与野党は規制庁設置をめぐる協議を進め、再稼働の審査にあたる新体制作りを急がねばならない。

日経新聞
・仮に節電によって今夏の危機を乗り切れたとしても、電力供給の不安が続く限り、企業は国内の設備投資をためらわざるを得ない。原発停止の穴を埋める石油や天然ガスの調達増加によって、年間2兆円を超える国富が余分に海外へ流出し、電力料金の上昇につながる。景気や雇用に影響がおよび、私たちの生活に跳ね返ってくる。
・再稼働問題とは別に、政府や電力会社はもっと節電を促す方策を急ぐべきだ。例えば時間帯別の電力料金制を拡充し、中小企業への省エネ機器の導入を支援することで、電力のピーク需要と総需要量をともに抑えていくことが望ましい。
・全原発停止に至るのは、政府の危機対応力の問題でもある。原子力安全の裏付けとなる規制の仕組みを刷新できてていない。原子力安全委員会は再稼働に向けたプロセスが滞っている。現在の原子力安全保安院が安全にかかわる重要な判断を扱うことに疑問がある。規制当局の信頼回復なしに原発への不信はぬぐえない。独立性の高い原子力規制庁を早く誕生させることが何より大事だ。


●yohoo政治投票実施中(5月5日〜5月7日15時40分現在修正)

・投票数計 20,604 票

原発ゼロ状態に経済活動やライフスタイルを合わせる            64% 12,988 票

・経済活動やライフスタイルを維持するために再稼働した方がいい       32%  6,181 票

・その他                               6%  1,035 票



<所感>
・野田内閣と民主党政権の無能無策が厳しい事態をますますこじらせている状況のようです。しかし、かりにしっかりした政権ができたとしても、日本国の近未来は前門に虎、後門に狼の状態が続くと思われます。

・21世紀の日本国民は、最強の敵である虎(二度目の事故発生で日本列島が放射能で死の列島になるリスク)を避けて、狼(経済的負担の増大)と戦って退治し、無事に生き延びる道を選択するべきです。国民は今度の選挙で、大切な一票を有効に使わなければいけないと思います。