ものの見え方が変わると気持ちが変わる

久しぶりに岡野守也先生のオープンカレッジを受講しました。特に印象に残った言葉を記録しておきます。(当日の発言内容を、私が著書を読んで理解できた内容を援用しながら翻訳しました)。
テーマは「コスモロジーの心理学」です。

●ものの見方が変わると気持ちが変わる

・人間の体の目と心の目の特性からその視界は限られており、四方八方の事実を一度に見ることはできない。それなのに、自分の視界内に存在して見えるものだけが、存在していると思い込んでしまう。

・目を見張ったり、見る方向を変えたり、見る距離を変えたり、逆立ちして見たりすると、視界が変わったり広がったり焦点がはっきりしたりして、新しい事実に気づくことになるので、気持ちが変わるのです。

(気持ちというのは物事に接したときに心にいだく感情や考え方なので、新しい事実が視界に入ってくると感情や考え方が自然に変わる訳です)。

●近代科学の世界観を人生観に適用するとニヒリズム、快楽主義、エゴイズムになる
・近代科学はすべてを究極の原子という物質に分析還元して、世界の客観的姿を捉える努力をしてきました。
そうした方法で描かれた世界はバラバラのモノ(原子)の組み合わせでできていて、神も魂もそういう方法では検証できない以上、存在しないということにされました。
神はいない。モノだけがあるといった物質還元主義な科学の目でみると「すべては意味などのないただのバラバラのものの寄せ集めだ」ということになります。

・こうした世界観を人生観にまで適用すると、ニヒリズムにならざるを得ず、「人間は死んだら無になる」「人生は自分の楽しみのためにある」という快楽主義、エゴイズムが社会に蔓延することになります。

・世界観、人生観、価値観を包括する概念として、文化人類学ではコスモロジーという言葉を使用していますので、これを近代科学のコスモロジーと名づけます。

●現代科学の宇宙論コスモロジーを学ぶと新しい視界が開け、コスモロジーが変わる

・現代科学による宇宙の歴史シナリオは、現代科学の5つの学説(アインシュタインの相対性原理、ガモフのビッグバン理論、ヘッケルのエコロジー学説、トムソンとクリックのDNA螺旋構造論、プリゴジーヌの混沌から秩序が生まれるとする散逸構造論)によって可能になった。

・現代科学の標準的仮説では、宇宙は137億年昔小さなエネルギーの玉から始まったと言われています。この仮説が正しいとすると、すべてが「ばらばらのモノ」の寄せ集めではなく、たった「一つのエネルギー」だった。つまり「すべてが一つ」だったことになります。このことは、神話や神秘主義的宗教や覚りの話ではなく、現代科学でも、「私たちと宇宙は一体だ」と言えることになります。

・現代科学による137億年の宇宙の歴史シナリオの一部分を列挙すると以下のとおりです。
水素原子の創発、星の創発(星の中では人体を構成する元素の相当な部分が誕生)、太陽系、地球の創発、地球での生命創発、優性生殖の創発、最初の海洋プランクトン、最初の脊椎贓物=魚類、植物の陸地移住、動物の陸地移住、哺乳類型爬虫類の繁栄、生物大量絶滅、恐竜創発、哺乳類創発大脳辺縁系・情動=心の創発)霊長類の創発、人類の創発(神話的文化)、霊性の先駆的創発、合理的文化・国民国家創発、理性・科学技術・産業の発達、世界大戦・環境破壊・核兵器ニヒリズム、全地球的社会創発

・私の体に水があり、したがって水素がある。それは「今ここにいる私の体には、宇宙137億年の歴史が込められている」ということです。星が一生かけて作ってくれた元素たちから生命が生まれました。みんな星の子なのです。それが価値がないなどと誰が言えるだろう。私たちの命には宇宙的、つまり絶対的な価値・尊厳があるのです。

・やまさんが奈良の歌会で詠まれた歌「生きている ただそれだけで 尊いんだ だらだら坂のまあるい夕日」を思い出しました。