仏文学者のアメリカ型資本主義解説に感心する

1月28日付毎日新聞文化欄を読んでいて、アメリカ型強欲資本主義に対する仏文学者鹿島茂氏の見解に感心しました。政治・経済問題を考えるとき、専門家の意見ばかりでなく、こうした文学者の見解も参考にすべきだと思いました。

●今回の世界金融危機の原因をアメリカ型強欲資本主義に帰する論調が支配的だが、その事実の指摘だけではいかにも不十分だ。アメリカンマインドにおいては、金儲けの道はそのまま栄光に通じる道と信じられているがゆえに、世の尊敬や賞賛を集めるため強欲になるという逆転現象が起こりうる。じつはこれこそが、今回の大恐慌の最も根深い原因なのだ。
●こうした蓄財と栄光の愚直なまでのイコール関係は、いかにしてアメリカで生まれたのか?マックスウエーバーはこの疑問に答えるために有名な著作を書き上げたが、私はもっと単純なものではないかと想像する。
●それはアメリカには王侯・貴族がいなかったという一点に帰する。王侯・貴族のいるヨーロッパ型の社会では、強欲一点張りで金儲けしても軽蔑されるだけだというメンタリティーが、ある程度共有されていたのだ。王侯・貴族がいなかったため、アメリカでは自助努力によって蓄財を成しえた者こそが、アメリカ的エリートであるという共通認識が生まれたのである。
アメリカ人は名誉と尊敬を求めて強欲資本主義に邁進したのであり、それはブッシュ前大統領が名誉と尊敬を求めてイラク戦争に突入したのと、全く同じ構造に基づいている。ゆえに、オバマ時代においてもこれが繰り返されないという保障はどこにもないのである。

EUを創設したヨーロッパのエリートたちは、アメリカ型資本主義を嫌悪しながらEUを発展させてきたようですが、オバマアメリカがどこまで変容できるのか、あるいはできないのか、しばらく目を見張って観察する必要があります。日本再生のためには、脱「アメリカ型強欲資本主義」が必要と思われます。