オバマ大統領就任演説をめぐる新聞論調抜粋

オバマ大統領就任でアメリカも世界も大きく変わろうとしていますが、小生が感銘した就任当日の記事を抜粋しておきます。
●たった20分の演説で、ブッシュ前大統領の8年間の間違った選択と失敗した政策を一掃し、アメリカが最も大事にしてきた理想に立ち返ることを約束した(ニューヨークタイムズ)。
●就任演説から
・面倒な決定は後回しにする時代は終わった。
・今回の金融危機は、注意深い監視がなされなければ、市場は制御不能になり、豊かな者のみを優遇する国は長く繁栄できないことを我々に気付かせた。
・先人は軍事力だけが我々を守るのではないことや、またそれを好き勝手に使えないことを知っていた。代わりに、彼らは慎重にそれを使うことで力が増し、安全は目的の正しさや他国の手本となる振る舞い、謙虚さや自制心から発することを知っていた。我々はこの遺産を引き継ぐ。
・我々が成功するかどうかは、労働と誠実さ、勇気、フェアプレー、忍耐、好奇心、忠誠心や愛国心にかかっている。こうした真理への回帰だ。責任を果たすべき新たな時代だ。
毎日新聞1月22日朝刊「私はこう聴いた」から
・チェンジなどという合言葉は無かった。公共のために支え会おうという訴えは「アメリカの再建」「再確認」と表現した。(久保文明東京大教授)。
・イエスウイキャンなどの歯切れのよいキャッチフレーズは一切なかった。困難な時代に即応した深い内容だった。「恐怖」よりも「希望」をと自信の回復を訴え、希望による国民統一を図った(有賀夏紀埼玉大教授)。
・金融、経済分野に関して具体性に乏しくがっかりした。現状認識も不十分だ。世界的な金融危機の根本を作ったのは、ブッシュ政権ではなく、クリントン民主党政権だ。当時財務長官を務めたルービン氏が中心となり、金融規制緩和を進めたためだ。演説では、そうした経緯にふれず「原因は一部の人々の貪欲さと無責任にある」という表現でごまかしてしまった。経済閣僚にはルービン派が多く、演説も規制反対の声に押し切られた印象を受ける。今後新しい金融監督機関を作り、どうコントロールするかが示されていない。ニューヨーク株式市場でダウ平均が急落したのも、投資家たちがこの政権は何もできないと危惧を抱いたためだろう。経済政策では、新古典派新自由主義を反省し、財政出動を重視するケインズ主義の復権に触れた意味は大きい(本山美彦大阪産業大教授)。


小生の印象では、オバマ氏自身の考え方はブッシュ型新自由主義路線(市場原理主義・金融資本主義・軍事優先主義の複合体)から明確に決別しようとの意思があり、期待が持てると思われます。しかし、経済関係のスタッフはクリントン政権時代の発想から脱却できそうにもないし、軍事関係のきわめて困難な課題を考慮するとと、いわば半自由主義路線を歩まざるを得ないのではないかと危惧します。日本の対応は難しい状況になると思われます。それにしても、日本の政治家にはないリーダーぶりに感心します。