スウェーデンの国づくりを学びながらの所感

最近は、学生に戻って学ぶことの喜びを発見して、毎日関心のあるテーマの読書を楽しんでおります。
関心のあるテーマの一つは、日本再生長期展望の確立です。

福祉と経済と環境のバランスをとりながら、信頼とコミュニティ感覚が豊かで、暖かく文明的な社会をつくりだしていると思われるスウェーデンの国づくりを学んでおります。

この1カ月ばかりは、スウェーデンの国づくりをリードしてきたスウェーデン社会民主党の考え方を学んできました。

学んできた所感の一端を記録として記載しておきます。

スウェーデン社会民主党は、グローバリゼーションの中味である新自由主義市場原理主義・軍事優先主義・金融資本主義)の根源を、新しい生産秩序と資本の権力強化として把握しています。
そして、同じ根源が格差是正と民主主義と福祉を拡大できる可能性を生み出していると指摘しています。しかし、この可能性が実現するためには政治的意思と力が必要であると述べています。
逆に言えば、新しい生産秩序に基づいた21世紀型の資本権力強化に対抗する政治的意思と力が弱ければ、信頼やコミュニティの感覚を欠いた、冷たく野蛮な社会が継続するしかないというわけです。

●「改良主義的考え方にとってどのよう要求が必要かは、常に進行する対話と討論によって定式化されていくし、またその理論も繰り返し現実に照らして検証されるのである」
「政治的民主主義によって、私的所有は残存したが、資本の利益に対して生産をめぐる他の利益が強化された。権力バランスは資本の所有者から市民、賃金稼得者、消費者の方向へ移動した」
こうした命題を見ると、スウェーデン社会民主党は、日本の左翼政党の主張や行動とは大分異なるようです。
20世紀におけるソ連共産主義やその考え方に近い左翼運動が一時的な高揚の後に凋落したのと比較して、スウェーデン社会民主党が政権を獲得し、長期に亘って政権政党として社会を改良し続けてこられた思想的な背景が理解されます。

●「市場経済は経済生活の一部であると考える。しかし、私的利潤への要求が他の利益のすべてに優先し、社会の発展を方向づけるべきであるとする要求を認めないし、また市場は社会的効用の源であり、社会生活の規範であるという考え方を受け容れるものではない」
こうした意思の持ち主である政党が長期に亘って政権を担ったことが、スウェーデン福祉国家になれた理由ということがわかりました。

●「社会保険とケア、学校、医療のような社会サービスは決して市場における財に還元できない。市場と競争の原理が公的サービスに浸透してはならない。 そこでは民主主義の原理、公開性、責任の明示が前面にうちだされなければならない」
こうした考えか方が福祉国家形成の土台となっているようです。

●「民主主義は活動的な市民によって支えられる。新旧の国民運動、成人教育には変革のための力が内在している。こうした運動は、利潤優先の営利的要求に影響されない出会いの場となり、そこで市民たちは彼ら自身の経験や要求を自然なかたちでより広い社会的視点に結びつけることができる」
社会民主党は自発的な国民運動から生まれた。自発的な国民運動における活動は、依然として私たちの政治活動の原型となっている。だからこそ、私たちは新しい国民運動のなかで示されてエネルギーを全面的に活用しなければならない」
こういう状況は、現在の日本ではほんの一部でしか見られない現象です。このあたりの改革が、日本再生の重要な鍵と思われます。