おひとりさま老後の疑似体験

 いつも元気な母べえが、膝の手術で1月21日から3週間の予定で入院することになり、おひとりさま老後を体験することになりました。

 現役時代に単身赴任を何年も経験していますが、単身赴任時の生活とおひとりさま老後の生活では趣が相当異なります。単身赴任中は夜間の仕事もあって外食率が多いし、体力もあるのでおひとりさまの悲哀は全く感じませんでした。

 感染症や肺炎を警戒しながら生活する現在、おひとりさまの老後生活は新しい体験です。母べえから入院前に「味噌汁の作り方」「洗濯機の使用法」などを学んで実行し、2〜3日ごとに実行しています。外食を極力減らして自宅で食事するよう心がけています。

 嬉しいことにときどき娘がいろいろなおかずを差し入れしてくれます。さらにびっくりしたのはご近所のやまさんからおいしいおかずの差し入れをいただき感激しました。

 そんな訳で今回のおひとりさま老後体験は疑似体験であって、本格的なものではありません。それでもブログを書くのが久しぶりの時間配分となりました。もっともたいして所得もないくせに、医療費が多いこともあり、所得税の確定申告書作成にだいぶ時間を取られました。

 そんな背景のもとで、社会学者の上野千鶴子著「おひとりさまの老後」を興味深く読みました。印象に残った記述のほんの僅かな一部を記録しておきます。

●独り暮らしのノウハウならまかせてほしい
(isorokuの所感・・・こういう表現ができる人はすごいなと思います。そういう分野が自分にあるか?今後の目標の一つにしたい)。
●どこでどう暮らすか
・都市住民は「いっしょに住むひと、いっしょに遊ぶひと、いっしょに働くひとは同じでないほうがよい」という考え方の人が多い。
・個室を経験した身体は、もとのように雑魚寝文化へは戻れない。
●どんなふうに「終わる」か
・東京都監察医務院に勤務する小島原将直さんには「孤独死」をめぐる心にしみる講演録がある。
講演の最後はこうしてしめくくられている。「死はいつ襲ってくるかわからない。そのためあまりにも妥協して、自分自身のない集団の中の人として人生を終わらせないように日頃から孤独を大切にして生きたいものです」。
 彼が高齢者にすすめるアドバイスは次の5点である。
1 生を受けた者は死を待っている人。よって独居者は急死の際早期発見されるよう万策尽くすべし。
2 皆に看取られる死が最上とは限らない。死は所詮ひとりで成しとげるものである。
3 孤独を恐れるなかれ。たくさんの経験を重ねてきた老人は大なり小なり個性的である。自分のために生きると決意したら世の目は気にするな。
4 巷にあふれる「孤独死」にいわれなき恐怖を感じるなかれ。実際の死は苦しくないし、孤独も感じない。
5 健康法など頼るな。
・、大方の日本人は家族が大好き。ほんとうは「社会的な死」である家族のなかの死が、あたかも「自然死」のように規範化され、「孤独死」を蛇蝎のごとく忌み嫌う。たくさんの孤独死の事例を経験してきた小島原さんのアドバイスのトップにくるのは「ひとりで死ぬのはぜんぜんオーライ。ただ、あとのひとの始末を考えて早く発見してもらうような手配だけはしておきなさいね」というきわめて現実的なものだ。

「人の死は常に偶然の手にゆだねなければならない」というこの人の死生観には全面的に同感だ。