憲法改正問題、原発問題で印象に残った新聞記事

定期の治療入院や退院後の風邪ひきなどでしばらくブログをお休みしてしまいました。入院中や退院後に読んだ新聞で印象に残った記事を記録しておきます。

憲法改正問題

●語られずとも明らかな争点(7月3日毎日新聞視点政治部池尻和生記者)

参院選挙後、憲法改正が戦後初めて具体的な政治日程に上るかもしれない。だが、特に改憲を主張する勢力はその意義について有権者に正面から語るだろうか。

改憲に執念を燃やす安倍首相の再登板で永田町では議論が活発になる一方、各紙の世論調査で96条の改正は反対が上回る。各党の公約では、実際は改憲に前向きなのに配布冊子に盛り込まなかったり、「今後の検討」と幅を持たせたりして立場を見えにくくする手法が目に留まった。私たちはたとえ語られなかったとしても、参院戦後の次に想像力を働かせて、一票を託すことが必要だと思う。


参院選 憲法と人権(毎日新聞7月20日論説委員・小泉敬太)

▼変えてはならないもの
憲法13条は国民の生命・自由・幸福追求の権利は国政で最大限尊重されると定め、25条は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を国民に保障する。水俣病の半世紀は、国民の権利が国によってないがしろにされる現実があることを映し出す。

参院選自民党憲法改正を公約に掲げた。なかでも、憲法改正草案で示した「国民の権利及び義務」の章は、見過ごせない問題をはらんでいる。

・現行憲法では国民の権利が尊重されるのは「公共の福祉に反しない限り」との条件が付くが改正草案はその条件を「公益及び公の秩序に反しない限り」と置き換えたのが特徴だ。「公共の福祉」とは一般に、他人に迷惑をかけるなど私人対私人の権利がぶつかった際に考慮すべき概念とされるが、草案は公権力によって人権が制約される場合があることを明確にしたのだ。

・一方で草案は、家族が助け合う義務、政府が緊急事態を宣言した際に指示に従う義務など、新しい義務を国民に課す。

憲法で国家権力を制限し、国民の自由と人権を保障するという考え方が立憲主義だ。草案はこの理念を大きく逸脱する。それだけでなく権力側が国民を縛ろうとする狙いがあるのではないか。野党の多くが「時代錯誤」などと批判したのは当然だ。

公明党自民党のこうした考えには距離を置く一方で、現行憲法に環境権など新しい人権を加える「加憲」をアピールする。新たな人権規定の創設に反対するつもりはないが、現行憲法でも導き出すことが可能で、立法で十分との指摘もある。

・選挙戦で、憲法をめぐる論戦は残念ながら深まらなかった。しかし、とりわけ人権にかかわる問題は私たちの日常生活に直結する。 現行憲法の理念は時代を超えても変えるべきではない。参院選後に本格化するであろう議論に向き合い、自らのこととして考えたい。


原発問題

原発淘汰社会を描け(7月18日毎日新聞視点論説委員青野由利)

・最近、米国では寿命を残して廃炉を決定する原発が相次いでいる。三十数年ぶりの新設計画
の中にも頓挫する例が出てきた。シェールガス革命に加え、福島の原発事故を受けた安全対策強化などの影響で、原発が割高になったためだ。地震国日本のリスクを考え合わせれば、原発が淘汰されていく社会の将来像こそ、参院選のテーマだったはずだ。

・現実には自民党の「再稼働推進」と野党の「原発ゼロ」の賛否に矮小化され、議論が深まらない。責任の一端は、エネルギー政策の全体像をあいまいにしたまま、目先のことしか語らない政権与党にあるのではないか。

地震や原子炉複数立地のリスク、事故当時の影響などを加えると、自民党の方針の下でも動かしうる原発は多くない。安倍政権がめざす「世界最高レベルの安全」のコストも高い。「電力自由化発送電分離」を進めれば、さらに原発の競争力は落ちる。

・そうした中で、事故リスクと共存しつつ、原発をどれだけ動かす必要があるのか。動かすほどたまり続ける核のゴミをどうするのか。自民党が示していないのは争点外しではないか。

原発ゼロを望む人が多いのに生活や経済への不安を解消できないのは、代替エネルギーの将来像が見えないからだろう。野党には、世界で成長著しい再生可能エネルギーの潜在力や育成の道筋、省エネの効果を説得力を持って示してほしい。一定期間の負担増を国民に認めてもらう必要もあるだろう。有権者も、原発に頼る目先の経済だけでなく、少し先の日本の姿を心に描いてほしい。
 
活断層などリスクが指摘された場合に、合理的な廃炉を進められるよう制度を整えるのも政治の役割だ。行き詰まる核燃料サイクルの幕引きや、核のゴミ処理にも道をツケなくてはならない。廃炉問題やゴミ処理の先送りが原発の危ない延命を促すことがあってはならない。

<所感>

・景気と経済の一本槍で、他の重要問題を争点化しないようにしている与党が過半数を超えるだろうという状況なので、重要な争点について印象に残った記事をピックアップしました。明日はこうした情報を踏まえて投票所に向かいます。