福島では1万6000人集結…原発反対集会の毎日新聞記事に共感

●国内外で反・脱原発集会が開かれた11日。「『原発いらない』の声は痛恨の思いを込めた福島県民の叫び。この声を全国の心ある人に届けるのは、県民の使命であり義務だ」。東京電力福島第1原発事故で、深刻な被害に苦しむ福島県で開かれた集会では、呼び掛け人代表の清水修二・福島大副学長がこう訴えた。未曽有の大災害が与えたショックは今も生々しく、各地で「原発反対」の声が上がった。(参加者数はいずれも主催者発表

福島県郡山市の開成山野球場で開かれた「原発いらない! 3・11福島県民大集会」には、全国から約1万6000人が集結した。10代を代表し、県立あさか開成高2年、鈴木美穂さん(17)は「原発がなければ、被害に遭った人を助けに行けました。人の命も守れないのに、電力とか経済とかいっている場合ではないはずです」と訴えた。

<所感>
・鈴木美穂さんの「人の命も守れないのに、電力とか経済とかいっている場合ではないはずです」という言葉を、財界、政界、学界、言論界、官界は厳粛に受け止める必要があると思います。

脱原発のボディブローを防げ(京都大学原子炉実験研究所教授山名元氏)産経新聞3月9日の記事に疑問を抱く

・安定・安価は産業の死活問題・・・日本の基盤を支えている産業が脆弱化し、海外移転に伴い日本経済全体が弱体化する恐れが迫っているのではないか。安全性を確証できた原発を再稼働して、当面のリスクを避けるとともに、その余力によって復興と経済の立て直しを加速する道筋は、決して非現実的なものではない。

・長い目で見た影響も無視できない。脱原子力願望が国民に広く浸透するのは、あの事故を経験した以上、理解できる。だが、原子力をなくすことの長期的影響は、あまり国民に伝えられていない。総発電力の3割近くを担う原子力を失えば、それを火力で代替する場合の化石燃料の供給不安定性や価格上昇のリスク、削減からの後退などさまざまなリスクを背負い込むことになる。大規模な省えネを必須要件とするのであれば、産業に対して過剰な負荷もかかってくる。

エネルギー政策で大切なのは着実性と確実性である。「安価でCO2排出や安定供給のリスクが低い原子力を一定規模で利用することこそ、今後のエネルギー戦略に「余力と確実性を与えるという可能性を安易に否定すべきでない」・・・(「」内の発言に大いに疑問を抱isoroku)。

・失われた原子力の安全性への信頼を取り戻せないと、再稼働にも長期的な原子力利用の継続にも共感が得られないのは当然で、安全性の再確立が緊要であることも確かだ。技術上の問題、安全規制上の問題、推進行政上の問題について新しい道筋が示されないまま、(脱原発の)ボディブローがますます深刻化してゆくことこそ問題である。

・米国では原発2基の新規建設許可が出され、英国や新興諸国でも原子力利用拡大の決定がなされている。海外の動きを参考にしながら、政府の強いリーダーシップによって、消極的「減原子力」ではなく、戦略的「賢原子力」の路線が提示されることを期待する。

<所感>
・事故が起きて、膨大な補償費や廃炉の経費、深刻な廃棄物・使用済み燃料処理問題、放射能汚染地域の拡大問題などが明確になった後でも、まだ安価な原子力発電という表現を使っている山名教授の論理に疑問を抱きます。

・近未来発生するであろう大地震津波で、万一二度目の事故が起きれば日本列島はすべて、放射能汚染に覆われます。原発事故の放射能汚染は自然放射能ではなく人工放射能ですから、低放射能でも人体に危険を及ぼすという学説があるようで、それに対する反対が殆どないようです。危機管理の要諦は最大リスクに対する備えですから、二度目の事故のリスクに対して安易な安全神話は絶対許されません。

地震が多い日本列島は、アメリカのアリフォルニア州の面積と同じ位であり、そこに54基の原発があります。アメリカの原発のほとんどは地震のない州に立地しています。アメリカが2基新設したからといって日本が追随する条件はありません。

・「技術上の問題、安全規制上の問題、推進行政上の問題について新しい道筋が示されない」ので「政府の強いリーダーシップによって、消極的「減原子力」ではなく、戦略的「賢原子力」の路線が提示されることを期待する」という姿勢は、根拠の薄い基盤に立った今までの原子力安全神話の繰り返しであると思われます。
地震という制約条件から逃げられない日本の文明の在り方を根本から考え直さないで、安易な政府のリーダーシップで賢原子力路線などに走られたら大変危険だと思います。

脱原発のボディブローはたしかに辛いことですが、賢原子力で日本文明の破滅の危険の道を選ぶよりは、有識者と全国民の知恵と努力でなんとか乗り越えられる別の道を発見すべきだと思います。